『〈ノヴェル〉の考古学』

ご恵投いただきました。ありがとうございます。

“ノヴェル”の考古学―イギリス近代小説前史

“ノヴェル”の考古学―イギリス近代小説前史

私が都立大の大学院にいたころから取り組んでいらっしゃった一連のご研究がまとまったもの。一部はその頃に読ませていただいたことなど思い出す。

出版社による内容紹介は以下のとおり。

ルネサンスから18世紀にかけて、ヨーロッパは翻訳の時代だった。本書は、言説の多様性と分散性という存在様態を明確化しようとするフーコーのひそみに倣い、諸ジャンルが内部で角遂・葛藤する18世紀初頭の近代小説において、イギリスの作家たちが置かれていた文学的ミリューの「近似値」を復元し、イギリス近代小説の誕生にいたる見取り図を描くことをこころみる。

目次を見てもわかるが、古代ギリシャ・ローマから中世、ルネサンス期のイタリア、スペイン、フランスの「ロマンス」や「ノヴェッラ」、あるいは「ピカレスク小説」などの散文物語(もちろん英国のものも含む)が、翻訳などを通していかに18世紀イギリスにおける「小説/ノヴェル」の成立と関わったのか、といった感じでとても射程が広い。本書はいわば「総論」にあたるとのことで、今後「各論」が予定されているとのこと。

8月〜9月中旬

8月4日(土)、午後から南大沢にて、母校の後輩の修論中間発表、学内学会理事会、先輩の博論公開審査、打ち上げ、というコース。博論かぁ・・・。

8月5日(日)、朝から熊谷にてオープンキャンパス。暑い。

その後しばらく採点の祭典。これまで専門科目はすべてレポートか論述形式の試験にしていたのだけど、今年度はとある科目で細かい知識を問うタイプの試験にしてみたら、なんだか大変だった。

8月18(土)、19日(日)、朝から大崎にてオープンキャンパス。模擬授業は撮影が入ってたので余計な気を遣う。これが公開されるかと思うと頭が痛いし片腹痛い。

その後しばらくは各種学内業務および締切を過ぎた何かに追われる。

8月27日(月)、昼から池袋。オックスフォード演劇協会来日公演『から騒ぎ』@舞台芸術学院。由緒ある学生劇団(ヒュー・グラントジュディ・デンチも在籍していた)による公演。舞台を1950年代のシチリアに移して(ということなので貴族とかではなくマフィア)、ファッションや音楽もそれらしくスタイリッシュ。俳優が全員若いので、ドン・ペドロとかリオナートとかに貫禄はあまりないわけだけど、まあ、あまり気にはならない。結末でドン・ペドロが弟ドン・ジョンをどうやら「処刑」する演出(舞台裏から銃声だけ聞こえる)が、ドン・ペドロの上に立つ者としての判断というよりは、弟に騙されて面目丸つぶれになった兄が逆上した感じになっていて(戻ってきたペドロは、まるで初めて人殺しをしたチンピラの「やってやったぜ、こんなのたいしたことないぜ」みたいな表情でもあった)、逆にその「若さ」が活きていたようにも思う。

8月29日(水)、夕方に池袋。雪之丞一座〜参上公演ロック☆オペラ『サイケデリック・ペイン』@サンシャイン劇場。作:森雪之丞、音楽:布袋寅泰、演出:いのうえひでのり、という派手にしかなりようのない組み合わせ。キャストは、福士誠治北乃きい綾野剛片瀬那奈内田朝陽前川紘毅、松田翔、内田慈、右近健一、菅原永二橋本じゅん、中谷さとみ、など。派手。

8月30日(木)、午後に恒例の同業者の会を小規模に。新たな共同研究プロジェクトの話など。どうなりますか。

このあたりで、追われていた締切に追い越される。

9月1日(土)、夕方から与野本町。 彩の国シェイクスピア・シリーズ第26弾『トロイラスとクレシダ』@彩の国さいたま芸術劇場。「蜷川シェイクスピア」、今回はオールメールで。キャストは、山本裕典、月川悠貴、細貝 圭、長田成哉佐藤祐基、塩谷 瞬、内田 滋、廣田高志、横田栄司小野武彦、たかお鷹、などなど。『トロイラス』って舞台で観て面白いものなのか不安というか疑問もあったのだけど、思った以上に面白く観劇。いやあ、まあ、濃厚なホモソーシャル・ワールドではある(オールメールだからというだけではない)。ミソジニーと言えばまさにそうか。

このあたりから、追い越された締切を追いかけることになるが、一方で学内業務がほぼ通常営業になる。

9月9日(日)、昼に日比谷。宝塚歌劇月組公演『ロミオとジュリエット』@東京宝塚劇場。フランス産のミュージカル版の宝塚版。宝塚ってすげぇよな、という小学生男子のような感想しか出てこない。

9月10日(月)、ゼミ飲み会。若いってすごい。

9月13日(木)、久しぶりに東京にきた友人を囲んで飲む。お元気そうでなにより。

9月14日(金)、他学科および他学部の若手の先生方数名と親睦会。学問、学内ゴシップ、学生政治、その他その他。

このあたりで、追い越された締切に追いつくどころかどんどん引き離されていく。

9月18日から後期の授業が始まる。卒論指導も本格化。あと今年は他大学の院を目指している学生がゼミにいるので、ちょっと気合入れてご指導申し上げないといけないか。しかも英文学ではないところを狙っているので、こちらもいろいろ勉強である。

34歳

昨日9月9日をもって34歳となりました。

相変わらず職場では若手扱いなので(所属学部の専任教員では最若手)、自分でもなかなか若手気分が抜けず、それに甘んじているところが大きいのですが、その一方、学問の世界では私より年齢は下でもはるかに優れた研究業績(博論含む)をたくさん上げている方々は多いわけで、私もいい加減どうにかしないとなぁ、などと思いながらぼんやり過ごした誕生日でありました。

6月〜7月

2ヶ月に一度の更新のブログになんの意味があるのかよくわからないけど、とにかく記録だけ。

6月1日(金)、大井町で卒業生と飲んだ。

6月9日(土)、劇団虚幻癖 第二回公演『神葬』@ザムザ阿佐ヶ谷。第一回公演に続けて観劇。うちの学生が頑張っておるので。

6月10日(日)、リキッドルーム筋少ライヴ。

6月16日(土)、18世紀イギリス文学・文化研究会@専修大学神田キャンパス。『ロビンソン・クルーソー』(河出)、『パミラ』(研究社)、『崇高と美』(研究社)の三つの新訳をそれぞれの訳者が語る、という趣向。訳すことはひとつの解釈でありそれ自体批評的行為であることがよくわかる。

6月20日(火)、劇団☆新感線シレンとラギ』@青山劇場。アイはコロシアイ。永作博美は美しい。

7月7日(土)、職場で英語スピーチ・コンテスト。今年は1年生から4年生まで計11名の学生がエントリー。3回目となってそろそろ毎年のイベントとして定着してきた感もあり。今年は合わせて卒業生を二人招いて学生生活・就職活動・社会人生活などをめぐって講演をしてもらう。いい話をしてもらえて学生のためにもなったのでは。

7月14日(土)、日本学術会議の公開シンポジウム「学士課程教育における言語・文学分野の参照基準」へ。案内はこちらへ。こういうのも踏まえて本学でも云々という話になるかと。

7月16日(月・祝)、オープンキャンパス

7月22日(日)、うちの演劇部「劇団夢民」の派生ユニット「ロジカル×シンキング」の公演『うわさのタカシ』(作・原くくる)を学内で。劇中には登場しない「タカシ」をめぐって三人の女性たちがあれこれやりあうものだから、散々に名前を呼ばれてアレでした。

同日、そのあと友人たちと飲んだ。

この間、研究はしていない。勉強は少しはしている。翻訳はしないといけない。

4〜5月

2カ月間ブログを更新してなかった。こんなことでよいのかどうか。
4月は年度始めのバタバタで過ぎていって、5月からようやくあれこれ活動をした感じである。
そしてやたらと酒を飲んでいるのはよろしくないが、タバコをあまり吸わなくなったのはよろしい。
よせばいいのにまた翻訳に関する仕事を引き受けてしまったので自分の首を絞めること甚だしい。


以下、通常業務以外の活動に関する記録のみ。

4月22日(日)、シェイクスピア祭@聖心女子大学。『十二夜』の朗読劇(とはいえかなり動きもあり)と講演を。

5月12日(土)、昼に王子。劇団粋雅堂『U_LEAP_7th』@pit 北/区域。エウレカへのオマージュ。新シリーズ開始とのシンクロは偶然らしい。

5月15日(火)、夜に赤坂。『ロミオとジュリエット』@赤坂ACTシアター佐藤健石原さとみという組み合わせ。しかしながら、キムラ緑子(乳母)&橋本さとし(ロレンス神父)の二人がさすがという感じ。

5月19日(土)、昼に秋葉原。国際異文化学会春季研究大会@首都大学東京秋葉原サテライトキャンパス。ジョイス、W.アーヴィングについての研究発表と、高専でのCALL使用の英語授業(というか導入に関するもろもろの問題など)についての報告。

その後、夕方から有楽町。ミュージカル『エリザベート』@帝国劇場。初エリザベート。さすがに面白い。

5月25日(金)、十七世紀英文学会第一回大会@立正大学大崎キャンパス。これまで支部ごとの活動のみで全国大会はおこなってこなかったこの学会であるが、このたび初の全国大会を。東北、東京、関西の各支部からひとりずつ研究発表という形式。この形式と、英文学会全国大会の前日という日程については実験的なものだけど、とりあえず今回は成功と言ってよいだろう。ただし今回は東京開催なのでそれなりに参加者を確保できたが、来年の東北で同じように試してみて、それを見てから今後のやり方を決めていくことになるだろう。

5月26日(土)、27日(日)、日本英文学会全国大会@専修大学生田キャンパス。両日とも会場担当のスタッフとして働く。初日は名誉革命シンポの部屋、2日目はアメリカ女性詩人シンポの部屋。前者は自分の専門の勉強のため、後者は英詩授業のネタ探しのために希望して配置してもらった。

5月28日(月)のジョンソン協会大会は不義理を働き、授業を。

5月29日(火)、夜に横浜方面へ。NYLON100℃『百年の秘密』@神奈川芸術劇場。東京公演(本多劇場)のチケットがとれなかったので諦めていたのだけど、神奈川公演のチケットが取れるという情報に基づき観劇。一部ではケラの最高傑作との声も聞こえているが、それもわかる。なんというか、新しいフェイズに入った感じもする。そして、犬山イヌコ峯村リエは化け物みたいな女優である(賛辞である)ことを再認識。

新年度

あっという間。3月後半は年度末ということで忙しいところに酒席が増えて、いささか体調を崩したりもした。健康には気をつけようとあらためて思った次第。

以下、会議その他の通常業務はのぞき、記録。

3月9日(金)、『死の欲動モダニズム』出版記念パーティ@渋谷、からの著者とともに朝までカラオケ、という古き良き南大沢時代のような流れ。

3月10日(土)、職場の関係者の結婚披露宴@横浜。おめでとうございます。職場の関係者なのだが、実は私の高校の先輩の妹さんでもあるという、奇妙な縁。

3月17日(土)、大学院修了式&宴会。英文で修士を終えた二人を祝う。おめでとう。

3月18日(日)、オープンキャンパスにて、はしゃぐ。

3月22日(木)、年年有魚『春風』@下北沢・駅前劇場。

3月23日(金)、卒業式@大宮ソニックシティ&パーティ@グランドプリンスホテル高輪にて、はしゃぐ。おめでとう。

3月27日(火)、『死の欲動モダニズム』合評会@一橋大学

3月28日(水)、今年度ゼミ飲みFinal。はしゃぎすぎた。

3月29日(木)、非常勤講師の先生方と懇談会。よろしくお願いいたします。

3月30日(金)、校務があったりで研究会に行けず。

3月31日(土)、スチュアート朝研究会にてBen Jonson特集。実はジョンソンってほとんど読んでないので、ぼちぼち主要作品はおさえていきたいところ。


相変わらず研究は遅々として進まないが、学内のものだけどいちおうテイトの『リア王』についての論文を提出することはできた。これもいずれヴァージョン・アップを。で、新年度の研究としては、引き続きシェイクスピア改作(いい加減ドライデンのものにチャレンジか?)についてと、ドライデンとトンソンが組んで出版したMiscellaniesについて少しやりたいと思っている。

ということで、今年度もよろしくお願いいたします。

いただきもの2冊

ご恵贈いただきました。ありがとうございます。

死の欲動とモダニズム―イギリス戦間期の文学と精神分析

死の欲動とモダニズム―イギリス戦間期の文学と精神分析

帯より引用

イギリス・モダニズム文学と精神分析が共有したテクスト性を
第一次世界大戦という歴史的な視点を導入し読解する。
理論性を逸脱し破綻していく精神分析の言説と
モダニズム文学の言語が濃密に共振する。

ここにある通り、この本を、精神分析という「理論」を「使って」モダニズムの「文学」を読解するもの、と思うと違うわけで、そのように「理論」や「文学」(それから「歴史」)をとらえることは、R・ウィリアムズの言う「抽象化」として本書では批判されるものである。

「歴史」ということでは、本書でいわゆる「実証的」な研究に「批判的」に言及されることがあるが、これが「否定」でも単なる「非難」でもないことは、著者がクラインやウルフのアーカイヴで手稿の類を読み込んでいること(それについてはご本人からもいろいろうかがっている)からも明らかであって、むしろそういった実証主義(Positivism)を経ても見えないもの、「実証」できない「過剰なもの/剰余」、あるいは「否定性」(negativity)、そういったものからこそわかるものがあるということだろう。と、とりあえずわかったような口をきいておく。ちゃんと読むのはこれから。

もう一冊、これはAnazonとかにないので書誌情報を。
W・クラーク・フォークナー大佐『スパニッシュ・ヒロイン――戦争と愛の物語――』仁木勝治訳、武蔵野書房、2012年。

原著者は、「あの」フォークナーの曽祖父。私はこの人物については全然知らなかったのだけど、訳者の「あとがき」を見ると、なかなかに波乱万丈な人生を送り、最期はミシシッピ州議会議員選挙に当選した翌日(1889年11月6日)に撃たれて64歳で死んだとのこと。この人、小説や戯曲を書いたり、肩書にある通り軍人としても活躍したりしたが、ビジネスもやっていたようで、撃たれたのも彼がかかわった鉄道会社の経営問題絡みらしい。で、「あの」フォークナーはこの曽祖父に憧れのような気持ちも抱いていたようで、作品にも曽祖父をモデルにした人物が登場するようだから、このノーベル賞作家について考える際にも重要になる人物だろうし、彼個人についてもいろいろ面白そうだ。ということで、この小説もこれから読む。なお、この人物については、本書訳者の手になる以下の評伝がある。

仁木勝治『アメリカ南部社会の寵児――フォークナー大佐の悲劇』文化書房博文社、2007年。