農耕詩の諸変奏

以下の本をご恵贈いただく。感謝です。

植月恵一郎、高橋宏幸、圓月勝博、海老澤豊、大石和欣
『農耕詩の諸変奏』(英宝社、2008年)

はまぞう」で出てこないし、版元のウェブサイトにもまだ情報がないけど、先月刊行されたもの。
昨年の日本英文学会の全国大会での同題のシンポジアムの成果。シンポの成果がきちんと刊行されるのはよいこと。結構「やりっぱなし」になることが多いし。

このシンポ、もちろんタイトルはエンプソンの『牧歌の諸変奏』の「変奏」なわけだけど、なかなか論じられることのない「農耕詩」というジャンルに関して、本邦初の本格的研究書(↓)が出たことを機に、改めて考え直そうという趣旨の模様。

田園の詩神―十八世紀英国の農耕詩を読む

田園の詩神―十八世紀英国の農耕詩を読む

この「農耕詩」というジャンルは、シンポのオーガナイザーでもあった植月先生が本書「序」や「あとがき」で述べているように、極めて現代的な関心事である「エコロジー」という観点(エコ・クリティシズム)からもネイチャー・ライティングとして読めるし、その規範がウェルギリウスの『農耕詩』であることから、英文学における古典の受容と変容という伝統的な文学研究のテーマとしても論じることができる。もちろん、レイモンド・ウィリアムズ的(とか書くと「研究会」の人に文句言われそうだけど)「田舎と都会」というテーマもある。「牧歌」との大きな弁別特徴のひとつが「労働/労苦(labor)」という点なわけで、そのあたりも、例えば近代市民社会の成立と労働観の変化といった主題で論じても面白そう。


いや、まあ、まだ全部読んでない状態で勝手なことを書いているだけだけど。