イングランド国教会

本当はこの前の研究発表前に読んでおくべきだった著作を先日遅ればせながら購入。

イングランド国教会―包括と寛容の時代

イングランド国教会―包括と寛容の時代

著者の博士論文を本にしたもの。著者には以前に研究会でお会いしたことがある(はず)。

で、序章で述べられているように、イングランド国教会について(特に、王政復古以後)はまとまった研究はあまりなされていないようで(日本語でも英語でも)、貴重な研究かと。さらに副題にもあるとおり、本書は王政復古期から18世紀にかけてのイングランドの宗教政策における「包括」と「寛容」をめぐる研究であって、「宗教史」と「政治史」を跨ぐものなので、ますます興味深い。ちなみにここでいう「包括」と「寛容」とは、著者の言葉によれば「包括とは、イングランド国教会の教義や儀式の規定を緩やかにして非国教徒を内部に取り込むことであり、寛容とは、非国教徒に国教会外部での公けの礼拝を認めることである。」(10頁)

以前のエントリーで少し王政復古期の宗教政策について俄か勉強で書いた際には触れなかったと思うけど、名誉革命後、ジェイムズ二世の治下において「寛容法」(Toleration Act)が制定されているが、、実はその際、その「寛容法」とセットになるものとして「包括法」(Comprehension Act)の制定についても議会で審議されていたそうな(というか、そもそも前者は後者を補足するものとして位置づけられていたとのこと)。全然知らなかった。本書はそのあたりの経緯(なぜ「寛容法」だけが議会を通って「包括法」は通らなかったのか)を中心に、王政復古から18世紀初頭までの宗教的「寛容」と「包括」をめぐるさまざまな議論の諸側面を一次資料を駆使しつつ論じている。もちろんPopish Plot や Exclusion Crisis も重要な出来事として扱われている。まだ読み始めたばかりだけど、とても勉強になる一冊。もとが博士論文だけあって、歴史の専門ではない私には難しいけど、その分、文献表も充実しているし、一般読者の便宜のためか注が詳しいのでありがたい。



もう一冊。こちらは今日の非常勤の帰りに新宿のジュ○ク堂で購入。

映画でわかるイギリス文化入門

映画でわかるイギリス文化入門

こちらは肩の力を抜きつつ楽しく読めそうな一冊。目次を見ると、取り上げられている映画も結構私好みのものが多い。『小さな恋のメロディ』も入っているし(いや、好きなんですよ)。