観劇、研究会、などなど

22日(火)にて年内の授業は終了。あとは諸々の仕事と卒論の添削などしつつ(問題山積)、30日から帰省の予定。

そんななか、25日(金)は夜にお茶の水にて年内最後の観劇。劇団解体社公演『わたしの舞台』第三部『だがわたしは自殺しない』@Free Space Canvas

久しぶりの「前衛」演劇。すでにshintak先生がレヴューを書かれている。最近この手のものは観ていなかったのだけど、とても面白かった。shintak先生も書いているように、笑ってよかったのだろうけど、やはり私も顔だけにやにやしながら、笑い声は抑えていた。ついでに言えば、あの「笑う女」にはこちらが笑われている気分で、どうしたものかと思ったり。そして、やっぱりお尻は痛かった(腰も)。


翌26日(土)と27日(日)は第33回スチュアート朝研究会@専修大学神田キャンパス。

一日目は4人の評者による文献解題(取り上げたものは末尾に)。二日目はGeorege Farquhar特集。ファーカーといえば、以前にやはりこの研究会で取り上げたThe Recruiting Officer (1706) と The Beaux' Stratagem (1707)が代表作であって、特に前者は王政復古期〜18世紀演劇のアンソロジーによく収録されていたりする。今回は、その代表作2作以前のものを4作品取り上げて、王政復古期演劇から18世紀演劇の過渡期におけるファーカーの位置づけと重要性を確認するとともに、ファーカー自身の劇作家としての仕事の変遷をたどるというもの。さらには当時のロンドンおよびダブリンの劇場事情(ファーカーはアイルランド出身でもともとはダブリンで役者をしていて、のちにロンドンで劇作家として活動するようになった)についてもとても興味深い話が聞けた。

研究会後の忘年会では、忘れてはいけない今年10月末の「大失敗」について、あれこれと。来年には名誉挽回したいもの。


文献解題で取り上げたもの(言及されたものも含む)。

The Duchess of Malfi (Arden Early Modern Drama)

The Duchess of Malfi (Arden Early Modern Drama)

Philaster, Or, Love Lies A-Bleeding (Arden Early Modern Drama)

Philaster, Or, Love Lies A-Bleeding (Arden Early Modern Drama)

Everyman and Mankind (Arden Early Modern Drama)

Everyman and Mankind (Arden Early Modern Drama)

上記は新しく刊行が始まった初期近代演劇のエディションのシリーズ。「アーデン版」といえばシェイクスピアのことだったのを、シェイクスピア同時代の劇作家の作品もやると。今後のラインナップも楽しみ。次は↓が出るらしい。
The Renegado (Arden Early Modern Drama)

The Renegado (Arden Early Modern Drama)


次は、ちょっと前の本だけど、改めて詩の音声面(韻律)について考えることも、現在の「文学教育」においては重要なのではないか、という視点からDerek Attridge のその方面の仕事を。

Meter and Meaning: An Introduction to Rhythm in Poetry

Meter and Meaning: An Introduction to Rhythm in Poetry

Poetic Rhythm: An Introduction

Poetic Rhythm: An Introduction

The Rhythms of English Poetry (English Language Series)

The Rhythms of English Poetry (English Language Series)


次は18世紀のフィラデルフィア奴隷解放運動にかかわったクェーカー教徒 Anthony Benezet の伝記。ぜんぜん知らなかった人だけど、黒人解放奴隷のための学校をつくったり、いろいろと興味深い活動をしているらしい。解題のなかでクェーカーについてもいろいろ教えてもらったし、奴隷解放運動にかかわった人物たちのトランスアトランティックな交流など興味深い。

Let This Voice Be Heard: Anthony Benezet, Father of Atlantic Abolitionism

Let This Voice Be Heard: Anthony Benezet, Father of Atlantic Abolitionism


最後に、ここしばらくどちらかといえば停滞気味だったらしいジョン・ダン・研究に新風を吹き込む(?)「エレガント」な著作(評者曰く)。

John Donne, Body and Soul

John Donne, Body and Soul

著者はS.グリーンブラットの2番目の妻(年の差24歳)とのことで、そのあたりの「ゴシップ」的話題も交えつつの解題。本書は題名にあるとおりダンにおける「肉体と魂」をめぐるもので、ここしばらくのダン研究が政治や社会といった側面に焦点を当ててきたのに対して、あらためて哲学的・神学的側面に真摯に取り組んでみようというもの。もちろん単なる反動ではなく、近年話題の「こころの哲学」方面にもさらりと気配りしたりしているらしい。


ちなみにこの解題企画は「今年の収穫」と題されているのだけど、私は↓これ(というか、新しいものは今年はこれしか読んでない)。

Heroic Mode and Political Crisis, 1660-1745

Heroic Mode and Political Crisis, 1660-1745