いただきもの2冊

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死の欲動とモダニズム―イギリス戦間期の文学と精神分析

死の欲動とモダニズム―イギリス戦間期の文学と精神分析

帯より引用

イギリス・モダニズム文学と精神分析が共有したテクスト性を
第一次世界大戦という歴史的な視点を導入し読解する。
理論性を逸脱し破綻していく精神分析の言説と
モダニズム文学の言語が濃密に共振する。

ここにある通り、この本を、精神分析という「理論」を「使って」モダニズムの「文学」を読解するもの、と思うと違うわけで、そのように「理論」や「文学」(それから「歴史」)をとらえることは、R・ウィリアムズの言う「抽象化」として本書では批判されるものである。

「歴史」ということでは、本書でいわゆる「実証的」な研究に「批判的」に言及されることがあるが、これが「否定」でも単なる「非難」でもないことは、著者がクラインやウルフのアーカイヴで手稿の類を読み込んでいること(それについてはご本人からもいろいろうかがっている)からも明らかであって、むしろそういった実証主義(Positivism)を経ても見えないもの、「実証」できない「過剰なもの/剰余」、あるいは「否定性」(negativity)、そういったものからこそわかるものがあるということだろう。と、とりあえずわかったような口をきいておく。ちゃんと読むのはこれから。

もう一冊、これはAnazonとかにないので書誌情報を。
W・クラーク・フォークナー大佐『スパニッシュ・ヒロイン――戦争と愛の物語――』仁木勝治訳、武蔵野書房、2012年。

原著者は、「あの」フォークナーの曽祖父。私はこの人物については全然知らなかったのだけど、訳者の「あとがき」を見ると、なかなかに波乱万丈な人生を送り、最期はミシシッピ州議会議員選挙に当選した翌日(1889年11月6日)に撃たれて64歳で死んだとのこと。この人、小説や戯曲を書いたり、肩書にある通り軍人としても活躍したりしたが、ビジネスもやっていたようで、撃たれたのも彼がかかわった鉄道会社の経営問題絡みらしい。で、「あの」フォークナーはこの曽祖父に憧れのような気持ちも抱いていたようで、作品にも曽祖父をモデルにした人物が登場するようだから、このノーベル賞作家について考える際にも重要になる人物だろうし、彼個人についてもいろいろ面白そうだ。ということで、この小説もこれから読む。なお、この人物については、本書訳者の手になる以下の評伝がある。

仁木勝治『アメリカ南部社会の寵児――フォークナー大佐の悲劇』文化書房博文社、2007年。