英語教育、オリエント表象、コングリーヴ、そしてミルトンなど

27日(金曜日)は午後から駒場。若手同業者で年に数回集まって主に英語教育について意見や情報の交換をする会。人の授業の話は参考になるし、ときにはとても励まされたりもする。ありがたや。


28日(土曜日)と29日(日曜日)はともに午後から神保町。スチュアート朝研究会@専修大学

一日目は、5月の英文学会のシンポジア第三部門「イギリス文学とオリエント表象」にこの会の主要メンバーが参加するので、そのリハーサル。概要はプログラムをどうぞ。非常に充実しておりますので、関係各位、ぜひ当日をお楽しみに。

二日目は「Congreve 祭り:その1」。William Congreve といえばThe Way of the World が代表作とされるわけだけど、今回はそれ以前のもの。デビュー作The Old Bachelor と第二作 The Double Dealer を。デビュー作でぶっとばして「若き天才」と評価され、二作目ではなんだか妙に「お勉強」してしまった感じでちょっと外した、という経緯が面白い。

その日は文献解題も一本。Robert D. Hume,The Economics of Culture in London, 1660-1740.”The Huntington Library Quarterly 69(2006): 487-533. タイトルにあるとおり、当該時期における「文化」(ここではいわゆる「エリート文化」に絞る)に関して、どの程度のお金が動いていたのか、残された数少ない資料を駆使し、でも徹底的に実証的な議論。俳優や劇作家、劇場主・興行主、作家、画家、音楽家などがどの程度の収入を得ていたのか、オペラの上演にはどれくらいの費用がかかるのか、劇場に馬車で通ってついでに食事もしてくるといくらかかるか、それを出せるのはどのくらいの収入を得ている人々なのか、それらの文化生産におけるパトロンの貢献はどのくらいなのか、などなど。いやあ、マニアックで素晴らしい(けど、絶対に真似できない)。ただ、こういうことは知っていて損はない。この方面で一冊準備中とのことで、刊行されれば貴重なものになるのだろう。


ところで、27日に駒場に行った際、生協の書籍部をふらりと覗き、↓が出ているのを発見。購入。

ミルトンと十七世紀イギリスの言説圏

ミルトンと十七世紀イギリスの言説圏

本文で450ページ近く、詳細を極める注と文献一覧を含めれば500ページにおよぶ、大部の書である。帯の裏側にはこうある。

本書は、十七世紀イングランドにおいて形成されたあらたな言説空間の性格を明らかにすることを目指すと共に、従来のミルトン研究とは少し視点を変えて、十七世紀当時の出版界を席巻したパンフレット出版を中心とした印刷出版文化のなかにミルトンを位置づけようとする試みである。それは、ミルトンがパンフレット論争に参入して、数多くのパンフレットを出版したという事実による。従って、これまで無視されがちな周縁的領域である宗教論争、説教、反カトリックプロパガンダアイルランドスコットランド報道、検閲をめぐる議論などのパンフレットに焦点を合わせて、大衆的出版物やニュース報道などが社会のなかでどのように流通して言説圏を形成したのかをさぐりながら、ミルトンの文学テクスト読解にもあらたな示唆を与える。そして、十七世紀イギリス文学・文化研究に書物史・出版文化史の面から新たな知見を提供する示唆に富む労作である。

ということで本書の射程は広いのだけど、実は目次を見ればもっと広いことがわかるかと。長く読まれるべき本であるかと思う。


本書の奥付にある発行日は2009年3月13日。一年以上の闘病生活の後、小野先生が亡くなったのが一年前のその日付である。ただでさえ大きなこの本が、それ以上に重く感じられるのは、いろいろなことを想い出すからなのか。