身体改変

昼から茗荷谷。お茶大COEプログラム「ジェンダー研究のフロンティア」Project D 英語圏第4回年次大会「文化/テクノロジーとジェンダー」お茶の水女子大学


私用のため第二部の研究発表まで。第一部のパフォーマンスに関しては、私はこの手のパフォーマンス・アートを語る言葉を全く持っていないので何とも言えないのだけど、とりあえず楽しく見させてはもらった。迫り来る巨大なオッパイと人々(観客)との壮絶な戦いであった(8割嘘)。


第二部の研究発表、一本目はフランスのアーティストOrlanが1990年から93年にかけて行った一連のパフォーマンスについて。これ、どういうものかというと、9回にわたる自分の整形手術の様子を衛星中継で見せるというもの。しかも、顎はボッティチェリの「ヴィーナス」、額はダ・ヴィンチの「モナ・リザ」、目は・・・、といった具合に、近代西洋の伝統的な「美」を断片化し、自身の身体の上で再統合しようというものだったとのこと。いや、なんだか凄いことをするもんだと。議論はそこから、主体形成とテクノロジーの問題(「テクノ・サブジェクト」という言葉は不勉強で知らなかった)、ジェンダーセクシュアリティの問題などへ。パワーポイントの不調で映像がスムーズに観れなかったのが残念。


研究発表二本目は、『白鯨』のエイハブ船長の身体に着目して、彼の顔の「斑紋」と「義足」、そして「目」といった、外部から観察可能な身体的特徴(義足については「身体改変」でもある)が乗組員たちに与える「畏怖」の念と、彼の体現する「男らしさ」とを関連付けつつ論じるもの。コメンテイターの補足によると、ジェンダーの観点からのエイハブ分析は少ないのだそうで、意外。今までは、この作品に出てくる数少ない(そして出番も少ない)女性登場人物に着目したり、あるいはそのような女性の存在の希薄さ(船上での不在そのもの)を論じたり、あるいはエイハブ以外の乗組員たちの「男同士の絆」に注目したりということが多かったそうで、今回の発表は意欲的な取り組みということになるようだ。発表を聴きながら思い出したけど、『白鯨』は昔翻訳で読み始めて、たぶん半分を過ぎたくらいで疲れて、終盤までの間をすっ飛ばして結末あたりだけ読んだのだった。すっかり読んだ気になっていたけど、岩波の新しい訳も出ていることだし、そのうちちゃんと通読しないとな。


なんにしても、発表のお二人と、会場で忙しく動き回っていた院生の皆さんはお疲れ様でありました。なんと言うか、自前で大きなプロジェクトを抱えてしまうと大変なんだなと。