遅ればせながらエンプソン
先週土曜日、午後から目白。第8回レイモンド・ウィリアムズ研究会@日本女子大学。
ウィリアムズ研究会だけど、今回はエンプソンの Some Versions of Pastoral (『牧歌の諸変奏』)の最初の「プロレタリア文学」の章を。なんでウィリアムズ研究会なのにエンプソンなのかとか、パストラル論なのにプロレタリア文学なのかとか、そういうことも含めて会の詳細については以下をご参照。
http://d.hatena.ne.jp/shintak/20071224
http://d.hatena.ne.jp/hidexi/20071223
http://d.hatena.ne.jp/melaniek/20071224
http://www010.upp.so-net.ne.jp/rododaktulos/sub3-9Decemberr.html
あとこちらも
http://d.hatena.ne.jp/shintak/20071122
上記でのご報告に私なんぞが付け加えることはない(というか、付け加えることができない)わけで。
で、私としてはやはり第2章の初期近代演劇における「ダブル・プロット」を扱う章から、その先の各章(シェイクスピア、マーヴェル、ミルトン、ジョン・ゲイなどなど)を読み返さないといけない。修士課程に入った年に一度読んでいるはずなのだけど全然覚えていないし、今回も第1章しか読み返す時間がなかった(時間がなかったのは自分のせいだけど)。
で、「パストラル」ということで私なんかがきちんと読んでいかないといけないのは、例えば以下の文献など。
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The Politics of Landscape: Rural Scenery and Society in English Poetry, 1630-1660
- 作者: James G. Turner
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Pastoral and Ideology: Virgil to Valery
- 作者: Annabel Patterson
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The Country and the City Revisited: England and the Politics of Culture, 1550?1850
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あとはやっぱり川崎寿彦の一連の「庭」ものか。
で、今回エンプソンの第1章だけ再読して研究会に行って難しい話を聞いてきて、第2章以降の記憶が全くないので疑問に思ったのは、エンプソンは牧歌(pastoral, eclogue)と農事詩/農耕詩(georgic)を区別していたのかどうかという点。両者はどちらも田舎/田園を描いたもので、大雑把に言ってしまえば都会/都市/「近代(的なもの)」に対して「前近代(的なもの)」を描いたとも言えるのだろうけど、大きな違いはそこに「労働」というものが入り込んでいるかどうかであって、なので牧歌の主人公である羊飼いは基本的に働かないし、農事詩に出てくる農民はもちろん農業にいそしむわけで。
だからこそ初期近代においては、牧歌的な空間がしばしば静謐な瞑想的空間の表象となり、それが例えば貴族や知的エリートのための空間の表象となったりすることがあったり、あるいはマーヴェルの描く「草刈り」の場面(これはたぶん牧歌的ではなく農事詩的)が「ピューリタンが引き起こした内乱」のメタファーとなったりするわけで。
何が言いたいかというと、20世紀のことが専門の人たちが中心のウィリアムズ研究会に、専門は17世紀です、という顔をして参加したのだから、ちゃんとエンプソンのマーヴェル論なりを読んで参加すればよかったなと。そういうこと。