研究会&例会

ずいぶんと間があいてしまった。その間なにをしていたかといえば、まあ、年度はじめらしくばたばたしていたわけで。今年度は昨年度よりも担当コマ数と委員がそれぞれひとつ増えたので、そのあたりのこともどたばたと。


で、かろうじていくつかの学術的集まりには顔を出せたので、記録だけ。

4月17日(土)、新英米文学会4月例会@早稲田奉仕園
ポー研究に関して最近の文献を取り上げて解題とのことで、耳学問。聞いている限りでは、アメリカにおける英米文学研究の潮流とだいたい足並みをそろえてきているようだけど、それでもやっぱりポーという作家のどこか異質な感じというのはあるのかな。

4月24日(土)、シェイクスピア祭聖心女子大学、には行けず。すいません。

5月1日(土)、日本英文学会関東支部例会東京大学駒場キャンパス、にはやはり行けず。大変申し訳ありません。

5月8日(土)、まずは「筑波大学 プレ戦略イニシアティヴ プロジェクト 知識のコズモロジー」の2010年度第1回研究会@Vision Center 秋葉原。前半の研究発表のみ拝聴。1本目はH・D・ソローの諸作品と当時のアメリカにおけるエジプシャン・リバイバルについて。『ウォールデン』のなかで、シャンポリオンヒエログリフを解読するように森の木々の葉を「読む」描写など興味深い。
 2本目は、シェイクスピアの『夏の夜の夢』を王政復古期にセミ・オペラに改作した『妖精の女王』(作者は特定されていない様子)について、シェイクスピアには出てこなかった「中国の庭」のシーンに着目し、王政復古イングランドにおける「中国」イメージを、やはり同時代の新旧論争(古代――ギリシャ・ローマ――と「現代」のどちらが優れているかという論争)とも絡めて検討するもの。わたしは不勉強なので、当時、「ギリシャ・ローマよりもさらに古く、それゆえ模範にすべきものは中国にある」といった考えが結構あったこととか知らなかったので、いろいろ勉強させていただく。

で、この作品では、作品を締めくくるのが「中国の庭」のシーンになっている。物語が終わって、登場人物たちが舞台を去ると、そこにディスカバー・シーンで「中国の庭」があらわれ、「中国人」の男女(別にそれまで作品にはかかわっていない)が出てきて歌ったりする。そのシーンのト書きや歌の内容から、どうやらこの「中国の庭」は「黄金時代」や「エデンの園」に比せられるものである。ついでに言えば(発表では言及されなかったと思うけど)、その歌の出だし10行ほどは、王政復古直後に多数書かれた Restoration panegyric のレトリックそのままでおもしろかった。

発表後のディスカッションの途中で失礼して、移動。十七世紀英文学会東京支部5月例会@大東文化会館。トマス・ブラウンの『キュロスの庭(The Garden of Cyrus)』という変な作品について。まあ、ブラウンのものはどれも変だと思うし、そもそも私なんかには読めない。どうやらブラウンは神の摂理みたいなものが quincunx(五点形)というかたち(figure とか order とかいってる)に具現化すると考えたようで、自然界の諸々(動植物とか)から人間の手になる人工物までなんでもかんでも、そのなかにひたすらこの五点形を見出して、なんだか喜んでいる。もちろんここにはさまざまな神学的問題が含まれているし、当時の自然哲学/科学の問題もあるし、この世界における秩序(order)と混沌(chaos)という話もしているところから、この著作が1650年代に書かれていることを考えればそこに政治的含意もいろいろありそうだ。なんだけど、この著作を含む彼の執筆活動は1640〜50年代に限定されていて(本業は医者)、彼が王党派であったことを考えれば、要するに内乱期には他にすることがなかったんだろう。それで海辺へ行って貝殻とか魚の鱗とかを眺めては「ここにも五点形!」、森へ行って葉っぱを眺めては「ここにも五点形!」、部屋でハサミを(以下略)、とかやって暇つぶしをしていたのではないかと、そんな風に思えたりするわけで。それはそれで面白い。